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Vol.101 ポケモンGOをきっかけに考えたい「小学生とスマホ、小学生とゲーム」

 

  夏休みスタートに合わせるように配信された「ポケモンGO」が大きな話題となる一方で、こ のゲームから派生する迷惑行為や「歩きスマホ」に代表されるマナー違反など、トラブルも相次 いでいるようです。これだけ話題になるゲームならば小学生も「やってみたい」と思うのは当然 だと思いますが、保護者としては「適切な使わせ方・遊ばせ方」に悩むところです。

小学生に情報端末を使わせる際の悩みや不安

  「ポケモンGO」の配信直前に、「小中学生にはスマホを持たせない」「LINEなどSNSは使わせない」と宣言したのは、栃木県壬生町です。この町の調査では、2014年の段階で小学2年生の28%、中学2年生の53%がスマホやケータイを持っているとのことで、事件に巻き込まれたりイジメが生まれたりする温床にもなるし、夢中になることで成績が下がり友だちを作れなくなるといった理由を挙げて、今回町 ぐるみでルールとして提示しました。私の周辺 でもこの提示に対してはもちろん賛否両論様々 な意見が見受けられ「正解などあるわけがない」 という結論に落ち着くのですが、小学生をお持 ちのご家庭ではそれでは済みません。そこで今回は、総務省の「未就学児等のICT利活用に係る保護者の意識に関する調査(注)」の結果を引用しながら「適切な使わせ方・遊ばせ方」に関するヒントを探していこうと思います。

     

子どもに情報端末やアプリを使わせることへの悩みや不安(複数回答・子どもの年齢別)

(単位%) 0歳〜3歳 3歳〜6歳 小1〜小3 小4〜小6
不適切な情報、画像に触れないか
52.5 56.3 63.0 64.5
保護者の知らないうちに課金サイトに接続しないか
51.2 51.2 56.0 52.5
心身への影響(視力、姿勢、学力、集中力など)
61.1 55.3 46.0 44.0
ネット依存にならないか
48.5 46.3 49.5 49.0
いじめに巻き込まれないか
13.2 14.5 16.0 25.0

 上の表を見てみてください。小学生までの保護者が「事件・トラブルに巻き込まれないか」を第一に心配していることがよくわかる結果になっています。社会との接点が少ない子どもが、いきなり大人と同等の情報量にさらされる可能性を否定できない状況に置かれるわけですから、その代表例である不適切な情報や画像、課金サイトといったキーワードには、多くの保護者が頭を悩ませていることでしょう。その一方で「心身への影響」の割合が、子どもの成長とともに減少していることが注目されます。小学生までは、自分専用のスマホ(携帯電話)を所有している割合は30%ほどとも言われており、保護者の端末や通信機能のあるゲーム端末、ご家庭のPCを利用するケースが多い分、保護者の管理の元に使用経験を積み重ねることで「適切な使い方・関わり方」が身に付き始めている子どもも多いのだろうと推測できます。その反面、中学生高校生になって初めて自分専用のスマホを持つ際に、壬生町が危惧するようなトラブルが露呈するケースはけっして少なくありません。
 その原因は、適切な時期に自己管理、すなわ ち「時間の使い方」を正しく身につけないまま 端末を手にしてしまうことにあります。この弊 害は小学生の時から少しずつ蓄積され、中学の ある時期にいきなり表面化します。前述の「保 護者が感じる悩みや不安」が学力面でも生活面 でも、ある日突然現実のものになってしまう、 といえばおわかりいただけるでしょうか。スマ ホについては、すでに高校生の7割が所有する 必須アイテムとなっていますから、ご家庭にお いては「いつから持たせるか」を念頭において、 小学生のうちからスマホをめぐるニュースなど を取り上げて会話しておくといった準備を怠ら ないようにしたいものです。中学入学前が「習 慣を見直す最後のチャンス」ととらえてご家庭 でのルールを決めておきましょう。

保護者が感じる「情報端末に触れる効果」とは

 次は「情報端末に触れることの効果」についてです。今の子どもたちはデジタルネイティブと呼ばれる世代ですが、子どもの年齢によって保護者の感じる効果が大きく違っています(下表)。0歳~3歳児の保護者の半数以上が「保 護者の手を煩わせない時間ができた」「子どもの機嫌がよくなる」に効果を感じています。私自身の幼少期はおそらくTV、自分の子どもはビデオがこの役割を担っていたわけですから、時代によって傾向が変わったわけではなさそうです。しかしながら情報端末は、子どもの成長にあわせて「学習ツール」に役割を変えれば、さらなる効果が期待できるようです。
 Vol. 96で紹介した通り、今の小学生の宿題に「自主的な学習」が浸透している理由もここにあって、こうした端末を駆使することが当たり前の世代にとっては、知識は「与えられるもの」ではなく「自分で獲得するもの」に変化していると言っても大げさではありませんから、子どもが興味・関心を抱いたことについて「深く掘り下げて調べてみせる」という姿勢を大人が見せてあげること、機会を作ることの積み重ねこそが、小学生には必要なのだろうと強く思います。

     

子どもが情報端末やアプリに触れることの効果(複数回答・子どもの年齢別)

(単位%) 0歳~3歳 3歳~6歳 小1〜小3 小4〜小6
保護者の手を煩わせない時間ができた
(静かになる、ひとりで遊ぶ)
56.4 52.5 33.5 18.5
子どもの機嫌がよくなる

55.6 28.5 13.5 7.0
学習ができた
(文字・数字・英語・歌・しつけ等)
23.2 25.8 24.5 19.5
子ども自身で知りたい情報を
探したり検索できるようになった
6.9 12.3 27.0 39.0
子どもがいろいろなことを
(深く)知りたがるようになった
7.9 14.8 15.5 15.5
各種端末の操作が出来るようになった

18.8 26.2 31.5 26.0
特に効果は感じていない

9.1 13.2 21.0 23.0

スマホやゲームは、すでに小学生の「敵」ではない

 80年代のファミコンブームの時には、ゲームと勉強は対立するものとして扱われてきました。当時の技術ではどうしてもゲームのバリエーションに限界があり、特にゲームを通して役立つものがないと考えられてきたからです。しかしながら現在は、スマホでもあるいはゲームであっても、これだけ社会に浸透しているものを「小学生だから」という理由だけで排除することは難しく、むしろ「我々の時代の百科事典に比べれば、何倍も効果的な利用法があるぞ」と考えるほうが健全なのかもしれません。今回の「ポケモンGO」にしても、ただのゲームと見る人と「最新のバーチャルリアリティ技術の公開」と見る人とでは捉え方は大きく異なりますし、今回の経験を身近なところでは「夏休みの自由研究」に、将来的には自分の研究や職業に昇華させる人もいるでしょう。
 私が今小学生の保護者だったとしたら、私自身の興味や関心は二の次にして、おそらく子どもと一緒に「ポケモンGO」をやってみるでしょう。自分で安全性を確認しながらそれをきっかけにして、大人と同じ端末を使うことのメリットとデメリットについて、ポケモンを捕まえながら話をするのだろうと思います。

(注)調査対象は、子どもがスマートフォン・タブレット型端末・ノートPC・デスクトップPC・携帯電話・PHSのうち少なくとも一つ以上を利用したことがあると回答した小学生までの子どもを持つ保護者(1750組、うち小学生400組)で、子どもが自発的に利用している場合だけではなく、保護者が子どもに見せたり使わせたりしている場合も利用に含めている。

資料:「未就学児等のICT 利活用に係る保護者の意識に関する調査報告書」総務省情報通信政策研究所

vol.101 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2016年9月号掲載

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