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Vol.108 最近の「部活」はどれほどハードなの?「部活と勉強の両立」はできる? できない?

 小学校を卒業した子どもたちにとっては、新しく始まる中学校生活への期待と不安でドキドキ の季節となりました。不安といえば学習面のこと、期待といえば部活のこと、というのは昔も今 も変わらないと思いますが、保護者の方々にとっては、自身の経験から「部活と勉強との両立」 には心配が尽きないようです。今回は「イマどきの部活」の実態を調べてみました。

運動部の「休養日」は守られているの?

 昨今「教員の長時間労働」が問題視されるようになったこともあり、部活顧問の多忙ぶりが話題にあがることも多くなりました。部活動が過熱することは生徒にとっても教員にとってもデメリットが多いはずなのに、その実態は昔からあまり変化がないようです。中学校の運動部については、「週当たり2日以上の休養日を設定すること」「休業土曜日や日曜日の活動については、学校週5日制の趣旨に適切に配慮する」ということを、平成9年(1997年)の段階で旧文部省が示しているのですが、その実態を「平成28年(2016年)度全国体力・運動能力等調査結果」から紹介してみます。

(1) 学校の決まりとしての部活動の休養日設定

  週に
1日
週に
2日
週3日
以上
非設定 その他
全 国 54.2% 14.1% 2.9% 22.4% 6.4%
公 立 55.6% 14.0% 2.0% 21.9% 6.4%
国私立 28.7% 14.4% 19.3% 30.3% 7.3%

(2) 土日の休養日設定

  月に
1日
月に
2日
月3日 月4回
以上
非設定
全 国 15.7% 14.7% 7.6% 36.2% 25.9%
公 立 15.9% 14.8% 7.5% 35.6% 26.2%
国私立 10.2% 13.0% 8.3% 47.2% 21.3%

※(1)で「非設定」と回答した学校は回答権なし

 このデータを見る限り、「週2日の休養日」が現場には浸透していないことがわかります。生徒・保護者からの要望によるものなのか、それとも熱心な教員の指示によるものなのかは不明ですが、週2日以上の休養日をきちんと設けている学校は、全国的にみれば「6校に1校( 17・0%)」にすぎないことがわかります。とくに公立では半数以上が「週に1日」と回答していますので、およそ半数の中学生が「土曜または日曜に部活をやっている」ことになります。その詳細については(2)のデータをご覧ください。
 公立中学校に限ると、3割を超える学校で「(定期テスト前を除けば)土日で休めるのは月に1回または2回」という設定になっているのです。
 教科書の内容が薄くなった「ゆとり教育」の時代であればまだしも、教科書の内容が濃くなり授業時間数も増えた現カリキュラムにあって、部活動にかける時間が変わっていな ければ、子どもたちにかかる学習の負担が以前に比べて大きくなっているであろうことは想像に難くありません。     

イマドキの部活、お休みできるのは何曜日?

 次に紹介するのは、土日を含めた曜日別の部活動実施状況をまとめたデータです。回答者は生徒(男女別)ですから、部活の種目、表中( )内の数値は部活動実施時間(分)となります。公立中男子の月曜日を例にとると、「およそ8割( 78・9%)の生徒が活動日でおよそ100分の練習をしている」と読み取ってください。このデータを見る限り「(公立中の)生徒たちにちゃんと休みはあるの?」と思ってしまいませんか? 私はこのデータを見て数値の高さに驚きましたし、この状況でよく「週2回、週3回の塾通い」ができるものだと感心しました。

(3) 男子運動部活動の実施曜日状況、実施時間(分)

  1週間
公立 78.9%
(100.5)
94.4%
(120.8)
88.3%
(115.4)
93.1%
(119.2)
95.6%
(123.6)
91.9%
(210.7)
67.7%
(162.6)

(952.3)
私立 69.5%
(73.9)
70.6%
(76.6)
71.1%
(79.3)
67.4%
(74.1)
72.9%
(80.1)
78.2%
(135.8)
43.4%
(94.2)

(613.8)

国立中学校は省略


(4) 女子運動部活動の実施曜日状況、実施時間(分)

  1週間
公立 80.1%
(102.2)
94.9%
(121.1)
88.4%
(115.7)
93.7%
(119.9)
96.2%
(124.4)
94.1%
(222.6)
64.6%
(161.5)

(967.0)
私立 71.8%
(74.4)
69.8%
(72.8)
71.5%
(76.6)
70.2%
(73.3)
72.8%
(78.1)
74.2%
(143.5)
33.1%
(80.6)

(599.4)

国立中学校は省略

※(3)(4) 実施時間は四捨五入の関係上、各曜日の時間合計と1週間の値に少しのずれがあります。

 改めて確認しますが、表の(1)と(2)の回答者は学校で、(3)と(4)の回答者は生徒であることを覚えておいてください。例えば表(2)では、公立であれ国私立であれ「土日の休養日設定」に大きな違いがあるようには見えませんが、(3)(4)のデータでは土曜・日曜の部活動実施状況に大きな違いが見られます。誰かが虚偽の回答をしている、とは申しませんが、それぞれの立場によって「活動状況」の捉え方に差が生じている可能性は否定できません。
 それでは曜日ごとに見ていきましょう。月曜日は祝日と重なることがありますから、この日を「休養日」と決めている学校が多いことが想像できます。公立中学では男子・女子を問わず火曜から金曜まで、そして土曜日も9割程度が、平日で2時間程度、土曜で3時間半程度の部活動を行っていることがわかります。この調査は5月~6月に実施されていますから、冬期だと実施時間はもう少し短くなることでしょう。こうして数値化されたデータを見ると、塾や習い事をしようとする際のスケジュール調整・管理が大変難しいことがわかります。体力面で不安の残る中1であっても、日々の勉強はコツコツとこなしておかなければなりません。曜日のメリハリもなく連日2時間程度の運動をこなした後にどうやって学習時間を確保するのか、塾通いであれ自学であれ、その場しのぎの判断ではなく入学時からしっかりとイメージして継続していくことが求められます。また、日曜日でもおよそ3人に2人は部活に出向いていることも確認してください。特に中3になると最上位学年としての責任と、近づいてくる受験に向けての準備の板挟みで悩むことも少なくありません。保護者の皆さまの時代に比べても入試の仕組み、内申の仕組みなどが大きく変わっていますので、情報収集や模擬試験への挑戦などにも日曜日にまとまった時間を確保しなければならないこともありますから、ハードな練習を課す部活やいわゆる「強い」部活に所属している場合には、他の人よりも早めに準備することが必須になります。
 それに対して私立中は土曜日も出校する必要がある学校も少なくありませんから、月曜から土曜まで通して実施状況が変わらないことへの心配は公立中よりは少ないと考えて差 支えありません。しかし、部活動の実施時間も公立に比べて短いかわりに通学時間が長くなる傾向があります。特に都市圏の学校では「重い荷物を抱えて満員電車で移動することに よる体力的負担」が勉強との両立を困難にさせる最大の原因となりますから、特に低学年では考慮しておく必要があります。

 大学入試の改革から始まり、それに伴い高校入試の中身も変わり、中学入試で問われることも変わりつつある中、中学入学後の部活動だけは30年前と比較しても大きな変化は見 られません。部活動の在り方が一律である必要はありませんが、「半強制による過度の時間的負担」を甘受できるほど現在の子どもたちはたくましくありません。お子さまが小学生 のうちに、勉強との両立、部活動以外の多様な経験など、様々な視点から中学生活をシミュレーションしておくことをお勧めします。

資料:スポーツ庁「平成28年度全国体力・運動能力等調査結果」

vol.108 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2017年4月号掲載

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