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Vol.36 英語を学習する目的とは?

 

 自分が算数・数学を指導する立場であり、かつ昔から英語を苦手としてきたこともあって、なかなか保護者の皆様に「学校で行われる英語の授業」についてお伝えする機会がもてませんでした。今回は、新指導要領導入によって「学校の英語」がどう変わろうとしているのかについて紹介していきます。
 「小学校に英語」という部分ばかりがクローズアップされていますが、本当に大変なのはその先なのです。

英語の授業は英語で行う

 平成25年度より順次実施される高校の新学習指導要領では、「英語の授業は基本的に英語で行う」ことになっています。いわゆる進学校であればともかく、すべての高校に導入することは素人目にみてもハードルの高い話だと思うのですが、あと数年後には実施されることになっています。おそらく皆様のお子さまが高校に入学する前後からスタートするわけなのです。
 ところが、現段階においてこのスタイルへの移行がうまくいっていないことが、文部科学省の調査でわかりました。全日制公立高校の普通科などで、「英語を聞く力や話す力をつける」ために行われている「オーラル・コミュニケーションⅠ」でさえ、担当する教員のうち授業のほとんどを英語で行っている者の割合は20%ほどに留まっているというのです。半分以上を英語で行っていると答えた教員が約33%いますが、数年後のスムーズな実施開始には黄信号が灯っている状況です。
 また、「生徒の英語使用状況」については、生徒がほとんど英語で話している授業は約16%という結果が出ており、授業の意図や目的がどこまで実現できているかは、微妙な状況になっているようです。また、地域によっては20~30年前の授業スタイルがそのまま続いているであろうことが予想されます。世の中がこれだけ急激に変化している中で、この数字は決して褒められるものではないと思うのですが、皆様はどのようにお考えでしょうか。

      

現場での戸惑い

    

 この変革の目的が「実社会で使えない英語」ではなく「使える英語」の習得にあることはいうまでもありません。かつての文法中心であった内容から、英会話などトータルの英語力を身につけることへシフトする理由に反対する人は少ないと思うので、「授業を英語で行う」ことへの移行はスムーズに進みそうに感じるのですが、なぜ現場は戸惑うのでしょうか。
 その理由は二つ考えられます。一つ目は「低学力者層への対応」です。公立高校の中にはアルファベットすらおぼつかない生徒も存在しており、現実問題としてレベル設定を低くせざるを得ないために移行できないといいます。
 そして二つ目は、こちらの影響が大きいと思うのですが「大学入試への対応」です。都立高校改革の中にも「大学合格実績の伸張」が掲げられるなど、「生徒を大学に合格させる」ためのカリキュラムを組む高校が多くなっています。例えば難関大学の長文問題演習を授業で行う場合、「和訳ができない」と長文の主旨を説明することも難しいと考えられます。
 また、センター試験におけるリスニングの配点は50点(筆記は200点)と割合が低いため、大学入試の変革が進まない限り「授業スタイルを変えたくても変えられない」というのは本音でしょう。おそらく生徒側からも「楽しく学べる英語」と「受験のため、得点を取るための英語」の区別を求める声が上がるでしょうから、授業のレベル・質をどこに設定すればよいのか、どこの高校も迷っているであろうと推測します。将来的には、この設定の仕方が学校選びの際の一つの基準、高校のアピールポイントとなるでしょう。     


「英語は何をするために学ぶのか」

 これからの子どもたちには、否応なく国際社会の一員としての振る舞いが求められるでしょう。「大学入試に有利だから」という理由だけで英語を勉強させるのは、もう時代遅れだと考えます。しかし公立・私立を問わず、決して少なくない数の高校が今後も「大学入試のための英語」の授業を優先させようとしているのも事実です。
 そんな中、大阪府の橋下徹知事は、TOEFLを大阪府の全高校で実施し、成績トップ50校に計5億円の予算を配分する意向を明らかにしました。「次世代のリーダーに必要なのは英語によるコミュニケーションとプレゼンテーション能力」と世界標準となる英語教育の実践を目指し、ツイッターでは「TOEFL授業は先生が大変なだけ。高校も言い訳せずに真正面から取り組んでもらいたいもんです。先生方、世界を見なさいって!」と発言しています。
 英検やTOEICに比べ、TOEFLでは学術的な内容も問われるといいます。グローバル化を目指す企業でさえほとんどがTOEICを「英語化」の基準にしていることを考えると、高校生に課すにはハードルが高そうですが、大学入試の先を見据えたその意図は明確です。
 英語はあくまでもコミュニケーションツールです。いくら発音がきれいでも単語を数多く知っていても、ただ得点のために暗記した知識の羅列では、会話は成立しません。
 「英語は何をするために学ぶのか」
 決して正解などありませんが、身につけた語学力を活かせなければ意味がない時代が、到来していることだけは事実のようです。

   

vol.36 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2011年 3月号掲載

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