子供の考える力・書く力はこうすれば伸びる!

HOME > 教育の現場から > Vol.59 公立中高一貫校を志望する際の留意点

Vol.59 公立中高一貫校を志望する際の留意点

 

 2月といえば中学受験シーズンです。首都圏では中学受験率が頭打ちになったといわれていますが、公立中高一貫校に関しては全くあてはまりません。新設された学校の多くで卒業生が出始め、彼らの大学合格実績が当初の予想を上回っていたこともあって、この人気はしばらく続きそうな気配です。
 今月は、公立中高一貫校受検の可能性を考えていらっしゃる方々に向けて、このブームの実態や留意点を紹介していきます。

公立中高一貫校を志望する理由

 先月も紹介した「首都圏保護者の中学受験に関する意識と行動に関する調査」の結果によると、首都圏で「中学受験を考えている親」が考える第一志望は、すでに私立中より公立中高一貫校が上回っていることがわかりました。

      

 特に目を引くのが受験させる理由です。私立中志望と公立中高一貫校志望との間に明確な差のつく項目は多くないのですが、表1・2を見てわかるように「公立への不信・不安の度合い」「教育方針や校風への関心の強さ」には、はっきりとした傾向がでています。そして、受験校決定に関しては「経済的負担」への意識が大きく影響しているようです。

      

 2012年度の入試では都立の中高一貫校10校でおよそ1万人もの志願者を集めました。東京都の小6生全体のうち10人に1人が受検している、というほうがその人気のほどが伝わるでしょうか。
 この勢いは、従来の中学受験ブームを上回っています。こうした数値を見る限り、これまでの中学受験に対する意識とは違うものを持った層が、公立中高一貫校を目指し始めていることがわかります。
 その理由は、「低いコストで、無理のない受検準備で、楽しい学校生活の中で、しっかりと大学に合格させてくれる」という「お買い得感」なのでしょうか。それとも、選抜方法が「適性検査」と呼ばれる独自の試験を用いているため「公立中高一貫校であれば、私立受験ほどのハードな受験勉強は必要ないから」という「お手軽感」なのでしょうか。どちらにしても、保護者の側に「私立受験に比べてハードルが低いから」という感覚があることは事実のようです。


公立中高一貫校と私立中の併願について

 そんな中、都立中高一貫校に絞って目を向ければ、実は私立中学との併願者の割合が高くなっていることに気づいておきたいところです。ある教育調査機関の調べでは、これら都立中高一貫校を併願する私立中受験生の多くは、偏差値60~65のいわゆる難関校志望だといいます。私の経験では、中学受験での偏差値50は、一般的な公立高校入試での偏差値65程度にあたりますから、こうした併願者の多くは成績だけを見れば「小学校では学年でもトップクラスの優秀生」ということになります。
 公立中高一貫校ブームは、これまで中学受験を積極的に考えることのなかった層に「ダメもとでチャレンジ」と関心を持たせる効果を生んでいる一方で、私立受験を目指している層にとっては格好の併願校となっている現実も表面化しています。
 事実、2012年度の入試では受検当日の欠席者(前日までに私立中合格のため等)は都立の中高一貫校10校あわせて400名にのぼり、合格発表後には92名もの入学辞退者が現れました。10校合わせての定員が1394名(応募者はおよそ1万人)しかありませんから、およそ7%にあたる入学辞退者(繰り上げ合格はあります)は無視できる数字ではありません。
 これを学校ごとに見ると、入学辞退率は全体的に女子のほうが高いことがわかります。表3で紹介しているのは特に傾向が顕著に現れている学校ですが、今後の大学合格実績の推移によって併願層のレベルがさらに上がる可能性もありますので、今後の動向に注目してください。

         

 最後に、公立中高一貫校をお考えの場合には、私立受験よりも念入りな情報収集を心がけてください。学校ごとの自由度が認められている分だけ教育方針やシステムはバラバラですから、勉強面においても、授業レベルやスピード、宿題の量などは大人の想像以上に大変です。お買い得感やお手軽感に基づく学校選びは、お子さまの性格や処理能力によってはミスマッチの原因にもなり得るのです。     

    

資料 ベネッセ教育開発センター「中学受験に関する調査」2012年 より

vol.59 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2013年 2月号掲載

一覧へ戻る
春の入会キャンペーン
無料体験キット