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Vol.61 小学校の英語と中学校の英語、いったい何が違うの?

 

 小学校で英語が必修化されて3年目の春を迎えます。一部報道によると、小学校低学年からの必修化に向けた検討も始まっているとか。その反面、小学校と中学校の間で学習内容の連携がとれていないために、生徒たちが戸惑う場面もあるようです。今回は、中学生を対象とした英語に関する調査結果を紹介しながら、小学校と中学校で学ぶ「英語の違い」に注目していきます。

中学生が振り返る「小学校での英語」

 この調査結果は、小学校の英語活動を実際に経験した(必修化の前)公立中学1年生を対象としたものです。まずは、次の調査結果(表1)をご覧ください。

 

(表1)小学校の英語活動で身についたと思うこと(複数回答)

英語を聞くことに慣れたこと
50.8%
英語の音やリズムに慣れたこと
41.2%
外国の人と接することに慣れたこと
35.9%
英語の文字の読み書きへの関心
19.4%
英語を話すことに慣れたこと
18.9%
英語を知りたい、使えるようになりたいと思う気持ち
17.4%
外国の文化や生活などへの関心
16.8%
わからない英語でも理解してみようと思う気持ち
15.2%

 小学校英語を必修化した理由が「音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う」ことでしたから、子どもたちが身についたと考える事柄の上位に「慣れ」が挙がっていることは、「聞く」「話す」を目的とした授業の効果を現しているといえるでしょう。ところが、次の表2を見ると、小学校の先生はガッカリしてしまうかもしれません。

 

(表2)小学校の英語活動で、中学校で役立ったと思うもの(3つまで回答)

アルファベットを書くこと
41.0%
アルファベットを読むこと
40.8%
英語での簡単な会話
34.4%
英語でゲームをすること
29.7%
英語の歌やダンス
29.0%
英単語を読むこと
27.6%

 「小学校卒業までにやっておきたかったこと」という質問でも、「英単語」の読み書き、「英語の文を書くこと」が上位に入っており、小学校英語が目指しているものが必ずしも中学校でも引き継がれているわけではないことが見て取れるのです。

 

中学生が感じている「中学校の英語」

 中学校に入ってからの英語の授業を、どのように感じているのかを聞いた「中学校の英語授業への肯定感」に関するデータ(表3)を見てみましょう。

(表3)英語の授業への意識(現在)※数値が高いほど肯定感が強い

話したり、聞いたりするだけでなく、読んだり書いたり すること
84.5%
日本人の先生が中心となって教えていること
77.1%
単語や文・文章を覚えなくてはいけないこと
72.0%
文法(文のルール)を学ばなくてはいけないこと
69.7%
音だけではなく、文字を使う勉強が増えたこと
61.8%
歌やゲームなどが授業の中心ではないこと
54.9%
授業中に英語を話す時間が少ないこと
25.4%
外国人の先生(ALTなど)の授業が少なくなったこと
23.0%

※各項目について「よい」「まあよい」「あまりよくない」「よくない」「あてはまらない」の 選択肢から「よい」「まあよい」と回答した%

    

 我々が子どもの頃に、「中学で学ぶ英語の授業とはこういうものだ」と肯定も否定もなく当たり前に感じていたことが並ぶ一方で、肯定感の低い回答項目2つについては「小学生のときの楽しい英語」をいまだに求めていると読み取ることもできます。これが、これからの新中学1年生が入学後に受ける「英語授業のギャップ」なのでしょう。中学校ではもちろん定期テストがありますから「楽しくコミュニケーションをとる」だけの授業では成立しません。小学生の頃にどれだけ「読む」「書く」への意識を高めておけるかが、中学校での順調なスタートへのカギになっていることは間違いないようです。


中学生はいつ頃から英語に苦手意識をもつのか

 今回の調査は「中1の10月」に行われています。この時「英語を好き(とても+まあ)」と答えた割合は57.2%ですが、これが中2になるとどのように変わっていくのでしょうか。中2(中3になる直前の1月~2月に調査)を対象とした別のデータを見ると、英語を「苦手+やや苦手」と答えた生徒は6割を超えているのです。この生徒たちが「苦手意識を持った時期」を見ると、

(表4)英語を苦手と感じるようになった時期

中学校に入学する前
11.7%
中1の始め~夏休み頃
26.6%
中1の夏休み後~後半
39.4%
中2の始め~夏休み頃
16.7%
中2の夏休み後~現在
5.6%
無回答・不明
0.1%
    

となっており、やはり「中1の英語」への順応、特に文法事項が多くなる秋以降までに「中学生としての英語の勉強の仕方」にしっかりシフトできているかどうかがカギになっているのです。

 小学校の英語授業はもちろんのこと、英会話をはじめとするスクールに通うなどして、我々の子ども時代に比べれば、今の子どもたちが「生の英語」に触れる機会は格段に増えています。低学年のうちから親しむ英語は本当の意味で「子どもたちの財産」になりますが、「中学や高校での英語の学力」とは一致しない部分もあるのです。「英語は楽しい」と感じる子どもたちが中学で暗い顔をしなくてすむように、英語を「読む」「書く」習慣も、6年生になったら少しずつご家庭でつけてあげてください。

    

資料
表1~3 小・中学校の英語教育に関する調査・速報版 ベネッセ教育開発センター 2011年
表4 第1回 中学校英語に関する基本調査 ベネッセ教育開発センター 2009年

vol.61 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2013年 4月号掲載

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