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Vol.69 算数を「好き」と感じる子どもが増えている!?

 

 新学習指導要領の実施に伴って、算数は授業時間数も学習内容もずいぶん増加しました。以前に比べて苦手意識を持つ子どもが増えるのではないかと心配する声も多くありましたが、その実態がいよいよ報告され始めています。

4年・5年の算数は楽しくなった!?

 今回は、2013年に実施された「小学生の計算力に関する実態調査」より、「算数の学習に関する意識調査」のデータを紹介していきます。 これによると、4・5年生において算数や計算を「好き」と答えた割合が、前回調査(2007年)よりも増えているというのです。

 

表1 あなたは算数の勉強がどのくらい好きですか

2013年 2007年
1年生 82.5% 83.5%
2年生 80.4% 82.5%
3年生 79.8% 79.7%
4年生 72.2% 69.1%
5年生 67.6% 61.7%
6年生 60.7% 63.6%

「とても好き」+「まあ好き」の割合

 とくに5年生では、算数を「好き」と答えた比率が5.9ポイントも増加しています。算数が「好き」から「嫌い」に変わっていく転換点が4年生にあることは前回から変わっていませんが、かなり改善されていることがおわかりいただけると思います。
 その一方で「6年生が危ない!」という新しい傾向も見て取れるのです。では、4年生から6年生にかけてどのような変化が生じているのでしょうか。もう少し詳しく紹介していきます。

表2 算数の好き嫌いについて(男女別)

男子 女子
2013年 2007年 2013年 2007年
4年生 76.3% 75.0% 68.1% 63.6%
5年生 73.5% 70.7% 60.9% 52.8%
6年生 66.0% 71.1% 55.8% 55.5%

「とても好き」+「まあ好き」の割合

表3 算数の好き嫌いについて(計算問題の得点別)

平均点以上 平均点未満
2013年 2007年 2013年 2007年
4年生 78.3% 78.9% 58.6% 50.2%
5年生 77.4% 73.7% 52.5% 44.8%
6年生 77.1% 75.5% 44.0% 42.9%

「とても好き」+「まあ好き」の割合

 表2を見ると、4年・5年で算数を「好き」と答える児童の割合の男女差が目立つようになることがわかります(2013年では5年生で12.6ポイント差がついている)。しかしながら女子だけに注目すると、4年・5年において算数を「好き」と答えた割合は明らかに上昇しているのです。
 次に表3を見ると、4年・5年において計算問題が平均点未満の子どもたちが「算数を好きと感じる割合」が急上昇していることもわかります。これが新学習指導要領の効果なのかもしれません。これまでであれば算数に苦手意識を持っていたであろう子どもたちも含めて、4年・5年では算数の楽しさを感じ始めているのでしょうか。とはいっても、やはり計算の苦手な子にとって「できない→だから嫌い」のスパイラルは、4年生の段階でおよそ20ポイントも差がついていることからも避けて通れないようです。とくに低学年の間には「確実な計算力」を身につけさせるために一定の演習量と時間を確保してあげたいものです。


6年生を迎えるまでに準備しておくべきこと

 では、お子さまを算数嫌いにしないためのポイントは「低学年のうちの計算力確保」以外に何があるのでしょうか。それは「自分の考えを説明できるようにすること」です。算数の勉強においては、言語活動の取組みといって「友達の考えを聞く」「自分の考えを説明する」ことが授業中にも行われています。
 実は、子どもたちの「友達の考えを聞く」ことについての肯定感は非常に高く、女子では4年~6年のいずれにおいても8割前後、男子も7割以上が「好き」と答えているのです。その一方で「自分の考えを説明する」ことについては、5年生を境にして男女の差が大きくなっていることがわかります(グラフ)。


 もちろん「恥ずかしい」「間違っていたらイヤだから」といった勉強面以外の感情が入ってくるであろうことは想像できますが、もう一つの原因として「算数=計算=作業」という間違った感覚が身についてしまっている可能性を否定することはできません。小学低学年の間であれば「習ったことを覚えてできるようにすればいい」で大丈夫ですが、3年・4年においては習ったことを相変わらず覚えるだけでなく「なぜそうなるのか」と理由を考える習慣作りが必要なのです。この習慣は一朝一夕に身につくはずがありませんから、毎日少しずつ数年の時間をかけて差がついてくるものです。それが表面化するのが6年生だと考えていきましょう。
 6年生の学習内容は「比を用いた文章題」「複合図形の面積」など、パターン通りにあてはめていくだけでは正解できないものが急に多くなってきます。文章題で「ここはかけ算? それともわり算?」というレベルで悩み始めたら要注意。出題者の求めるものは「計算の仕方(用法)」ではなく「思考(考え方)」なのですから、算数を「作業」だと思っている証拠だととらえてください。注目するポイントがずれているのは明らかな「つまずき」のサインです。なぜ・どうしてを考える習慣はお子さまが受講している作文講座においても当然大切なものですが、高学年の算数、そして中学以降の数学の学習においても計算力と同等に重要視されるものなのです。計算ができるようになって得られる満足感は学習の大きなモチベーションとなりますが、保護者の皆さんには「それだけでは不十分なんだ」ということをしっかりおさえておいていただければと思います。

資料:『小学生の計算力に関する実態調査2013』ベネッセ教育総合研究所 2013年

vol.69 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2014年 1月号掲載

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