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Vol.92 小学生でもできる「夢を現実に変える」目標設定の方法

 

 皆さんは「マンダラ図」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。最近あちらこちらで目にすることが多くなった用語ですが、ビジネスマンやスポーツマン、あるいは受験生など、「自分が掲げた目標を実現するまでのプロセス」を書き残す手法として、使う人が多くなっているといいます。小学生や中学生でも使える場面が多そうですので、一度ご家庭でも試してみてください。

具体例を見てみましょう


 野球に興味のない方でも大谷翔平という名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。彼が高校1年生のときに作成したといわれる「マンダラ図」を参考に、その作成法を紹介していきます。

(1)9×9の合計81のマス目を用意して、ど真ん中のマス目に夢(決心)を書く
 大谷選手の場合は「ドラフト1位で8球団が競合する選手になる」ことが夢だったようです。中学受験の準備をしているお子さまであれば、ここが「志望校合格」となることでしょう。

(2)周辺の8マスに「夢を実現するために必要な目標」を書く
 大谷選手の場合、「運」「人間性」まで考えていたことに驚かされます。受験生であれば「国語」「算数」といった教科、「メンタル」「運」といった項目も必要かもしれません。8マス埋めるのは想像以上に大変かもしれませんが、しっかり考えてみてください。

(3) 未使用のマス目を3×3の8ブロックに分け、8ブロックのそれぞれ中央に(2)に書いた項目を記入し、その項目に必要なことを周りの8マスに書き込む

 (2)で考えた8つの項目をさらに具体化していきます。例えば「国語」という項目であれば、国語の成績を上げるために必要なこと、例えば「漢字練習」「記述対策」などで埋めていくことになります。大谷選手の例を見ると、「運」という項目では「部屋掃除」「ゴミ拾い」といったキーワードが挙げられています。これだけでもお子さまに見せる価値があるかもしれません(笑)。
 こうしてできあがった図を「マンダラ図」と呼ぶそうです。問題解決や目標達成を目指す際に、やるべきことをただなんとなくイメージするだけでなく、具体的に自身でデザインすることで多くの刺激や発見を得られる点がメリットとなります。

「目標」は「夢(決心)」とは違う

 この図を小中学生に作らせることのメリットとして、「夢(決心)」と「目標」が違うことに気づかせることがあります。ダイエットで考えるとわかりやすいのですが「夏が近いので少し痩せよう」というのは「夢(決心)」で、そのために何を、いつ、どのように行動するのか決めることが「目標」となります。「18時以降は何も口にしない」「1日のカロリーを制限する」といった項目が「目標」です。
 痩せようと思っても長続きしないというのは、まさにこの「目標」の設定が甘かったり視覚化していないために忘れてしまったりすることが原因なのかもしれません。だからこの「目標」に合わせて(3)で記入する具体的な行動を考え習慣化することが、少なくとも勉強では絶対に必要です。ただ「漢字練習」と書くだけでなく「1日に100字練習」とか「同音異義語と対義語を1日おき」など、自分でやることを具体的に決めれば、より意欲的に取り組めることでしょう。夢を実現するためには、日々の努力が欠かせないことは誰だってわかっていることですが、それを継続させることは大変難しく、ある種の才能とさえ言う人もいます。「夢」と「日々の努力」をつなぐものが「目標」です。何でも3日坊主に終わりがちな自分自身にとっても耳の痛い話ですが、小学生のうちにこうした思考習慣を得ていればずいぶん自分自身の生活も変わっていたのかもしれません。

「必要なことを書き出すこと」のメリットは大きい

 勉強でも仕事でも、要領がいいと言われる人に共通していることは「段取りのよさ」です。やるべきことの優先順位がしっかりしていたり、他の人とは違う手法を用いていたりと、その行動には工夫やアイデアがあふれているものです。おそらくこの人たちは「その日やるべきこと」をしっかり書き出し(あるいは頭の中で想定し)て、整理しながらこなしているはずです。つまり、このマンダラ図を使っていなかったとしても、同種の準備をすることがきちんと習慣化していることが予想されます。
 逆に段取りの悪い人に共通しているのは、必要なことを書き出すという行為そのものを面倒がったり必要なことが見えていなかったりという点です。マンダラ図を使ってゲーム感覚でマス目を埋めていくという作業は、81もの項目を書かなければならない大変さよりも、マス目を埋めるために一つの夢に対して様々な視点から違うことを考えるために、アイデアや気づきが増えるといったメリットのほうが、特に小中学生には多いと思います。大谷選手の「運」「人間性」といった項目に代表されるように、同じ「夢」を持っていながらも、普通の人では想像すらしないような深い発見をして日々工夫している人もいるのです。算数の文章題で解法を考えることは苦手であったとしても、こうしたツールを使って「思考の質」を高めることは充分に可能です。むしろ速さや割合の問題よりも、将来の仕事にはよっぽど使える思考法ともいえるでしょう。

 今の子どもたちは「勉強のやり方がわからない」と悩む割合が高くなっているという調査結果がありました。勉強も仕事も「いつ、何をやるか」を自分で決めることがスタートですが、どうやらそれすら自分自身で決められないのかもしれません。そんな子どもこそこのマンダラ図を使ってみると効果があるでしょう。「テストで100点をとりたい」という夢と「何をすればいいかわからない」という現実を、段階を踏んで少しずつ自分で考え続け、そしてつなげてほしいと強く思います。勉強でもスポーツでも仕事でも、その「目標設定の大切さ」は同じなのですから。

vol.92 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2015年12月号掲載

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