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Vol.99 大学入試改革のいま(1)

 

 昨年春に話題となった「大学入試制度の大改革」ですが、継続検討の項目が多いながらもおお よそのビジョンがすでに提示されています。昨年の報道から変更されていることもいくつかある ので、ここで一度まとめておきましょう。

センター試験廃止後の大学入試はこうなる

 大学入試改革のスケジュールを世代別に整理すると、次のようになります。

  大学受験年度 センター試験 基礎学力テスト
(試行実施)
学力評価テスト
(先行実施)
基礎学力テスト
(本格実施)
学力評価テスト
(本格実施)
現中3 2019 年 高3 × × × ×
現中2 2020 年 × 高2 高3 × ×
現中1 2021 年 × 高1・高2 高3 × ×
現小6 2022 年 × 高1・高2 高3 × ×
現小5 2023 年 × 高1・高2 高3 × ×
現小4 2024 年 × × × 高2 高3

※2019年4月~2020年3月までを「2019年度」とします。

 予定通り、現行の大学入試センター試験は2019年度で廃止され(現中3が最後)、2020年度から新しいテストが実施されます。ただし学習指導要領の改訂によって、高校で学習する教科やカリキュラム・内容が変更となるのが2022年度の高1(現小4)からなので、現中2から現小5の世代については、「基礎学力テスト」は試行実施期間、「学力評価テスト」は先行実施となります。
 それでは、それぞれのテストに関する詳細を見ていくことにしましょう。

(1)「基礎学力テスト」はどうなるの?
 「基礎学力テスト」には、名称の通り高校で学習する基本知識の習得状況を確認する目的があり、「複数回の受験が可能」「AO・推薦入試の選考資料になる」といった内容が報道されていました。
 現在までに決定したこと、未定のことをま とめておきます。

【決定事項】
・2019年度(平成31年)から実施(本格実施は2023年以降)
・試行実施期間中は、大学の個別試験や専門学校などの入学、就職などに利用しない
・実施科目は5教科のうちの必履修科目(試行実施期間中は国数英)

【継続検討】
・英語の扱い(民間のノウハウの活かし方は決まっていない)
・試験の実施形式、実施時期/コンピュータの利用法

 「基礎学力テスト」においては、現小5の世代までは「実施はするけれど、入学・就職などに利用しない」ので、位置づけとしては全国学力調査に近くなります。対して現小4の世代からは本格実施となりますから、実施科目が5科目となり、結果が調査書に記載され、選考資料に使われる可能性があることを覚えておきましょう。実施・運営には課題が多いため、実施形式・実施時期は流動的です。

(2)「大学入学希望者学力評価テスト」はどうなるの?

【決定事項】
・2020年度(平成32年)から実施(本格実施は2024年度以降)
・解答形式は従来のマークシート式に記述式が加わる
・記述式が出題されるのは国語と数学で、国語が優先
・英語は民間の資格検定試験も活用。「話す」能力も評価の対象となる

【継続検討】
・出題する教科と科目
・試験の実施時期、年間の実施回数(年複数回実施には課題が多く結論が出ていない)

「大学入学希望者学力評価テスト」(以降学力評価テスト)は、従来の大学入試センター試験の後継にあたりますが、「思考力・判断力・表現力」も評価するために、「答え」だけでなく問題解決の過程や自身の考えを記述する問題が出題されることになります。基礎学力テストが入学者選抜に使われない現小5までの世代では、「現行のセンター試験よりも難易度がアップした新テスト」以外に選抜材料がないため、いわゆる一般入試を目指すのであればこれまで以上にしっかりとした学力が必要となります。英語については、「読む・聞く・書く・話す」の4技能をバランスよく評価するために、民間の資格試験を利用する流れがすでに高まっています。

(3)各大学が個別に行う試験の選抜方法について

【決定事項】
・脱知識量、人物評価や入学後の意欲(大学入学後の「学修計画書」の提出など)を評価
・AO・推薦入試は存続(ただし、学力検査免除はNG)

【継続検討】
・「基礎学力テスト」試行実施期間中の、同テストの各種独自入試への可能性
・調査書の改善内容、記載基準など

 国公立・私立を問わず各大学が個別に実施する入試については、筆記試験の結果のみを判定材料に用いるのではなく、小論文や面接・志望理由書などを課すことで、様々な物差しで学生を「丁寧に、多面的に」評価することが求められています。具体的には、各大学が事前に「どんな学生が欲しいのか、そのような学生を選ぶために、どのような意図でどのような入試を行うのか」を明らかにし、そのビジョンに沿った学生を選抜しますから、「試験の成績の良い者から順に合格となる」とは限らなくなります。しかしながら、現在一部の私立大学に見られるような「実質的な学力検査免除」は許されなくなるのに「基礎学力テスト」は試行期間中には使えないといった状況を考えると、現小5~現中2の世代は学力の到達度目標を「学力評価テスト」に定めておかないと、土壇場になって困る場面があるかもしれません。

我々の「過去の経験」は通用しなくなるかもしれません

 新テストの概要が見えてくるとどうしても我々大人は「入試形式の変化」を気にするものですが、今回の大改革はこれまで誰も経験したことがないものであり、保護者の過去の経験も、受験のテクニックやマニュアルも通用しなくなります。つまり、親も子もそして皆さまのお子さまが将来通われる中学や高校も、「変化への対応力」が試されるサバイバルが始まるということです。難関大学突破を目指し、現在の受験形式にあわせた受験対策を重視している私立中学や高校(一部の公立も)の中には、「プレゼンや課題解決能力は大学に入ってからでも伸ばせる」という方針のところもあり、大学合格実績や評判だけで進学する学校を選ぶと、その学校の教育方針がここから数年の間に変化しなければ「お子さまの目指す大学が発信するメッセージとお子さまの実状」が一致しなくなる可能性もあるのです。
 だからこそ、ちょっと気になる中学や高校の入学説明会にはお子さまが受験学年でなくてもできる限り足を運び、その学校が「今回の大学入試改革をどのように捉え、何を変えようとしているのか」を、しっかり確認しておくとよいでしょう。

vol.99 ブンブンどりむ 保護者向け情報誌「ぱぁとなぁ」2016年7月号掲載

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